Photo © Yukinori Okamura

物流会社のプリミティブからの一進化形

当地域では地場産業として物流・流通業があり、戦後、家族経営から始まり、成長を遂げてきた会社が多くある。本件では、既存社屋(築35年)の劣化、社員の増加といった課題に対し、新社屋建設と既存社屋のリノベーションを行った。

今回の設計は新築1棟と、旧社屋のリノベーションという2棟の構成である。新社屋は3層で、1,2階は会社機能、3階は社長の自邸で、リノベーション棟も1階は会社機能、2,3階は会長(創業者)の自邸である。
クライアントは保管業、ネット販売、運送など物流・流通を担う企業として、「モノを保管するホテル」というビジョンを掲げており、このビジョンに呼応する形でエントランスの雰囲気を軽快にしている。
会社機能のフロアは、従来縦割りのレイアウトだったところ、毎日席が入れ替われるようにフリーロケーション型のレイアウトを採用した。六角テーブルをフレキシブルに連結・分離させ、人数に応じたミーティングスペースを簡単に作ることができる。このようにシームレスな空間を実現したことによって、部門間の隔たりがなくなり多様な社員の間での会話が増え、「席が固定されていた時と比べ、コミュニケーションが活性化された」という社員の声も寄せられた。結果、コミュニケーションを起点とした、グループの柔軟性、働きやすさ、生産性の向上にも一役買えたようだ。
首都圏の支店の稼働は24時間体制であるため、いつでも連絡を受け、指示を出せるように、新社屋の3階部分は社長の自邸となっている。
リノベーション棟は別館(ANNEX)の位置付けであるが、お客様との商談、グループ会議、社員研修などを目的とした会議室が1階に備わっている。初めて会社を訪ねる来客動線もこちらからになる。新築棟とは外部庇により繋がれ、この2棟は一体としての会社機能を保持している。両建物の入り口には、「The HOTEL for Storage」という代表の思想を掲げ、来訪者や社員にメッセージとして伝えている。

戦後、家族経営で興した会社が成長していく過程を垣間見ることができた。当初は住宅を改良して事務所にしていたが、時代の変革に伴ってインターネット通販の利用者が増大し、物流・保管業の顕著な需要増と、翌日配送できるという地の利を生かした配送業(トラック輸送)の躍進から、会社が拡大していった。事業の発展には、社員及び地域のパートさん、多くの「働き手」が不可欠であり、現在会社を支えている人々はもちろんのこと、今後の新たな雇用のためにも会社のイメージの変革が必要であった。
一見、物流業・保管業はブルーカラーに捉えられがちだが、オートメーション化、働き方改革などにより、過去のいわゆる3Kのイメージではなく、戦略・成長こそが問われるまさにビジネスの本流であり、会社一丸のその努力が新たな荷主獲得に繋がっているように見えた。
今回の新社屋、リノベーションによる効果は、「雇用」から、イメージ変革による「今後の顧客獲得」を見据えた流れであったのだと感じた。

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小山企業本社屋

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Location
埼玉県戸田市, Japan
Year
2020

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