Photo © Yukinori Okamura

設計依頼を受けたアパートの計画地は、最寄駅から徒歩12分程の市街地に位置し、東西南と住宅や集合住宅に囲われ、北側が道路に面した敷地であった。近くには大きな病院や看護学校があるため、そこで働くスタッフや都内の大学に通う学生向けワンルームのニーズがあると考えていた。しかし、すでに近隣にアパートメーカーが建設した数多くのワンルームアパートが点在しており、その中には空室率が高いアパートも見受けられていた。
施主からは融資金額内で中長期的に空室率を増やさないように依頼された。そのため、アパートメーカーと差別化した設計が必要であり、従来のアパートにはない魅力を価値づけするように計画した。設計コンセプトは「単身者同士が同じ屋根の下でお互いを気遣いながら生活ができる」また、「住人同士でコミュニケーションが取れ、孤立しないような住戸の関係づくり」とした。そこで、オーソドックスではあるが、住人同士が語らえる場として中庭を中央に囲う形を提案した。この中庭が、住人だけでなく街の人とも繋がり合える、「単身の孤立」から「繋がり」へと変換できるような空間となることを目指して模索した。
本計画がコロナ禍の2020年8月から始まったこともあり、単身者の暮らしのあり方や生活習慣、そして「シェアすること」について考えを巡らせ、シェアの仕方にも配慮した。
近隣には医療関係者も多く、コロナも蔓延しているため、部屋は個室を選択し、敷地の形・大きさ、木造での検討や法規的制約から2階建てとした。床壁天井は、医療関係者や不規則職業時間者のニーズを考え、音が伝わりにくいプラン・構造とした。住戸内は面積確保を最大限にするため、バルコニーを無くしてガス乾燥機を設置した。また、ユニットバスをベンチ付きのユニットシャワーにして省スペースを図ることで、手洗いうがいのできる洗面台などを充実させた。さらに、水回りの一部にカラーを配することで非単調さを印象付け、住み手が愛着を持てるように考えた。
住人同士だけでなく街の人ともコミュニケーションを図れるよう、中庭は人々が入ってきやすい形状を検討した。そこで、建物を2棟に別けて中庭を構成し、壁面をカーブさせることで、人が近づき、スリップインしたくなるような「道路からのくぼみ」を作った。加えて、道路と中庭のアスファルトが一体化して見えるように仕上げることで、より一層「くぼみ」に人々が集まりやすくなるよう工夫した。
今回設計したアパートは、コロナ禍であることを踏まえ、安易に空間共有を広げることは避けた。ただ、同じく昨今の大きな社会問題である「孤立」も避けられるように、人々が互いに気遣える距離感をプランニングした。このアパートが画一的で隣人に無関心な社会を打破する一助になることを願っている。

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くぼみアパートメント

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Location
埼玉県, Japan
Year
2023

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