サンカク
山梨県, Japon
- Architectes
- 空間研究所/篠原聡子
- Lieu
- 山梨県, Japon
- Année
- 2016
八ヶ岳山麓の標高1,500mという高地に建つ山の家である。夏はきわめて快適で汗をかくこともないが、冬は零下20度になり、雪も深い。さらにこの敷地は南に向かって傾斜していて、最大で5.5mの高低差がある。この場所のそうした条件にできるだけ直截に呼応する建築をつくろうと思った。雪を落とす60度の勾配をもったサンカクの屋根は、ベイマツの2x12インチの板を折板のように継いで、それが構造となり、内部空間の仕上げとなる。その木造の屋根と敷地の起伏と持ち上げられた床だけが基本的なこの建物の構成要素である。敷地の高低差に素直に馴染ませるために、基本のサンカクを大小2個の建物に分けて、眺望を配慮して配置し、間を高低差のあるテラスで繋いだ。
大きいサンカクは主屋の機能をもち、幅2m、高さ2.3mの小さな箱を挿入し、一室空間の構成を残しながら、小さな箱を手掛かりに水回りや寝室を配している。寝室といっても、セミダブルのベッドが置ける空間と2組の布団が敷ける小上がりが小さな箱に格納されているだけで、あとはその箱の上部(ロフト)にも寝ることはできるが、個室はない。誰かが起きると皆寝ていられない、ということになる。もっとも、日を遮るブラインドなどが開口部についていないので、夜が明けると自然と目が覚める家ではあるのだが。小さなサンカクは、時として仕事部屋となり、ゲストルームとなり、大きなサンカクと距離があることで、多目的に時々の機能を果たす。
7月の末に、10人ほどの仲間が集まって食事会が開かれた。2組の親子がテラスいっぱいにカルタを広げて遊び始めた。何人かはそれを眺めながらテラスの段差に腰掛けてビールを飲み始めた。ふたつのサンカクに挟まれたこのテラスは、屋根のない部屋になった。人がその場所の自然と素直に関係をもつ、そうした場所に人と人の豊かな関係ができる。その間を取りもつのが、「家」という建築のもっとも基本的な機能であるように思う。
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