葛飾の趣居
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- 東京都葛飾区, Japan
- Anno
- 2020
自宅の斜向かいの敷地に離れをつくりたい。という依頼からこのプロジェクトは始まった。新型コロナウィルスの蔓延に伴った「住むことの変化」。テレワークが一気に進んだ社会では通勤という義務も希薄になり、家にいることあるいは住む場所すらそのスタイルが変化しつつある。このプロジェクトはコロナ禍以前より始まったものであるが、ある種都市における別荘のようなものとして、住まい手が趣味を楽しみ、友人を招き、楽しく過ごすために計画されたものである。
スペースは、防音性能を確保した天井の高い半地下室、ゴルフシミュレーターとカウンターキッチン、フリースペースが2階と3階に渡る大きなワンルーム、そして1階のガレージというシンプルな構成である。建物全体が3層のほぼワンルームになっているため、その大きな空間の中に存在する、それぞれの場所を結ぶ動線が重要な要素であると考えた。閉ざされた半地下の壁から鉄板だけが跳ね出す1階と2階をつなぐ階段。T字型の柱と段板を一体化し、階段でありつつ空間を仕切る間仕切りにもなっている2階と3階をつなぐ階段。吹抜けを渡る船底のように鉄板を曲げて作ったブリッジ。いずれも強い個性を持ってワンルームの中に存在する。
地盤の状況から建物を軽量化するため鉄骨造とし、外壁を可能な限り薄くするために小径の柱を並べて壁内に納め、柱型が出ないようにしている。また、鉄骨造ながら半地下室の防音性能を確保するべく、半地下室は浮き遮音構造としている。
思う存分この場所を楽しんでもらうために、外殻としての建物の性能を高めることと、それぞれの要素のディテールを作り込むことで、住むための場所でありながら、単なる住居とは少し異なる空間の様相を作れたのではないかと思う。