ガレリア御堂原

大分県別府市, Japan
Foto © Nacasa & Partners
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Architetti
DABURA.m
Sede
大分県別府市, Japan
Anno
2020

体験価値を高めるサイトスペシフィックホテル

1900年に大分・別府で創業した関屋リゾートを事業主として誕生したホテル。扇状地のエッジを成す断層崖の上に立ち、湯けむりの街並みと別府湾が見晴らせ、35室の各室で掛け流しの温泉と景観が楽しめる。温泉と宿泊機能を中心としながらも、パブリックスペースが開放された「サイトスペシフィック(土地に根差した)」な建築空間と、12組のアーティストによるアートワークが触媒となる、地域の新たな交流拠点として計画された。
 今日の地方都市では「均質化」が進み、多くの場所で地域性を感じられる空間が失われつつある。それを受け止めて思考することは、設計者にとって重要な課題だと感じている。設計に当たり、地質学的時間の中で生まれたこの地の独特の地形から考え始めることで、今日の新たな地域性への思考を触発する、地域とつながる建築を実現したいと考えた。断層崖の大地から削り出されたような壁の群れを想定し、洞窟を掘り抜くように壁の群れに穴をうがつことで、内と外がつながっていく空間とした。
 ホテルは2棟から成り、本棟は新築で、レストラン棟は既存RC造建築物を減築および増築で活用した再生建築である。館内は雁行した平面形状で、軸線が交錯しながらつながる半屋外の「路地空間」で接続されている。歩くと壁や穴でフレーミングされた風景とつながり、染み入る光や音を感じ、路地の街・別府の街歩き体験に通じる空間体験となっている。
 壁の群れは、酸化鉄の成分で調色したコンクリートを、大分産スギ材による「まく板型枠」によって打設した。色調はボーリング時に確認した支持層や別府石を参照している。白華やムラ、出目地の欠けなど、打設過程で発生する「現象」を受け入れて「景色」としており、成り立ちの時間が可覚化され、この地の地質学的時間につながっていく建築と空間体験を生み出したいと考えた。

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