北区立田端中学校
プロジェクト一覧に戻る- 場所
- 東京都, 日本
- 年
- 2019
コンパクトな高層校舎と地域景観
北区の学校適正配置計画の一環として、旧滝野川第七小学校の跡地に計画された中学校である。敷地は、大正から戦前にかけての田端文士村と呼ばれる雰囲気をかすかに残している地区で、北側には地形から生じた大きな擁壁を抱え、隣接した寺社などとともに、この地域の貴重なオープンスペースを形成している。住宅などに囲まれた7,200㎡ほどの狭い変形した敷地に、体育館、プール、通常の教室(12クラス)、防災拠点機能などが求められた。校舎を8階建て、体育館を2階建てとし、それぞれの屋上をプール、運動場として利用したコンパクトで立体的な中学校として計画した。変形した人工芝のグラウンドは、隣接する寺社などのオープンスペースと一体となって地域の雰囲気、記憶を残すことにつながっている。道路に接した学校の敷地は開放し、特に交差点に面した一角は、街角の森として当時の面影を意図した。そこに面した体育館棟は、1階に地域開放関係、2階にアリーナを配し、単独でも活用できる。生徒は2階の昇降口から登校し、3~5階は学年ワンフロアの構成で、6,7階が特別教室のフロアとなる。生徒の移動は主に階段となるため、また、上下階の連続性やつながりを強める意味で、オープンスペースをつなぐように階段の出入り口を2か所としたX型の緩やかな階段を建物中央に設けた。階段は単なる移動だけではなく、生徒たちが立ち止まって話ができるような空間として出会いや交流のきっかけとなることを意図している。5階では体育館棟の屋上を利用した運動場が利用できる。高層となる校舎棟は、高い耐久性と工事精度の確保、周辺が住宅街であることから工事騒音の削減、などからプレキャスト・プレストレストコンクリートによる構造体とした。この精度の高い高品質な躯体そのものが外装となる計画で、地域の景観の継承とともに学校が新しい地域のシンボルとなった。
新しい都市型校舎のあり方を発見する
田端中学校の場合、他の公立中学校と同じプログラムでありながら、非常に限られた敷地面積、変形した形状、高低差など特別な条件が重なった。5回行われたワークショップでの議論や関係者の夢や要望、意見を伺う中で、コンパクトに高層立体化した校舎によって、広いグランドを確保し、隣接した大龍寺、八幡神社とつながる田端地区の歴史と文化を継承する地域のオープンスペースをつくる計画となった。これは新しい都市型校舎のプロトタイプともなるものではないかと考える。