島の消防署
プロジェクト一覧に戻る- 場所
- 香川県観音寺市伊吹島, 日本
- 年
- 2016
- クライエント
- Kanonji CIty, 観音寺市
- 構造設計
- 大賀建築構造設計事務所
- 設備設計
- 明野設備研究所
- 施工
- 伊井工務店
瀬戸内海の離島、伊吹島につくられた消防署兼総合防災センター。
「消防車庫」と消防隊員が待機し、災害時の避難所となる「待機室・避難室」、そして、屋上の「火の見櫓・展望台」から成る。
新しい建築が、瀬戸内海の伝統的な景観を残す集落に立つにあたり、その景観の中から突出せず、溶け込むことを配慮した。
建物は、かつて小学校の校庭だった大きな空地のランドスケープが、一部持ち上がって、宙に浮かんだようなデザインとなっている。その屋根となる「火の見櫓・展望台」は、自然芝仕様の人工芝で仕上げ、集落の高い場所から見下ろすと、点在する畑や緑とつながり、景観に溶け込んで行く。建物の高さは、斜面に広がる集落の家並みのスカイラインの内側に納め、下から見ると、家々に隠れて、その存在は見えない。外壁は、耐候性の塗装で仕上げた杉板で、島でよく使われている素材である。そのため、近くから歩行者の視線の高さで見ると、見慣れた素材で覆われているため、強くその存在を意識しない。
建物の回りに、敷地の周りで見え隠れしていた、さまざまな人の活動を受け入れる場を配した。人口減少、高齢化で、人の気配が少しずつ減りつつある島では、ささやかな気配の顕在化さえ、島を元気づける。「火の見櫓・展望台」は、来訪者や島民が、島のすばらしい景観を望み、芝生の上で、昼寝やピクニックができるつくりとなっている。大きく延びた南側と西側の庇は、老人会がペタンクの後で休憩できる日影のテラスや、放課後に子供たちが水遊びする水場となる。また、大きな窓は、集落の上部の家々に住む人々に対して、消防の集まりを見せ、消防団の活動を顕在化するための仕掛けである。消防車庫は、4m近い窓を持っている。以前の消防署では、シャッターの奥に隠れていた、この島にしか残っていない、貴重なオート三輪を含めた4台の消防車を、観光資源として位置付け、島外からの来訪者に見えるようにした。物の気配も、また、背後にいる人の存在を暗示する。
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