写真 © Kenta Hasegawa
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ときわ台のアパートメント

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場所
東京都板橋区, 日本
2017

この建物の敷地周辺は1種住居地域や準工業地域といった用途地域だが、狭隘な敷地や道路が多く道路斜線や日影規制によって建物の高さは低層程度に抑えられている。一方で集団規定の副産物として、上空では物的に何によっても占有されることのない「空所」が自ずと残されることとなる。地上では建物が建ったり、解体されたりして都市が更新されていくが、上空の空所は過去から現在まで継続して、そして未来に渡ってもただ空いていることが期待される。地上で人や建物が占拠、占有する場が「図」になるとすれば、その一方で何ものにも占有されることのない空所は都市の「地」として捉えられ、都市のダイナミズムから離れた静的な拠り所として考えることができるように思う。

この建物の場合、敷地が尾根道沿いであることと周辺の多くの建物が低層であることから、(奇妙な表現かもしれないが)豊かな「地」を備えていることがわかっていた。建築するということは建物それ自体で場を占有するという意味で「図」を描くことに他ならないから、いかにしてこの豊かな「地」との関係を位置づけるかがここで考えたことだ。
この建物は7戸の単身者用賃貸住宅からなるアパートメントである。狭小な敷地に地下を含めた6層に7つの住戸を積層している。階高を2,500mmに抑え、最小限の平面による階段室のコアを中央に配し、2.5m内外の細長いボリュームが外形を敷地いっぱいに沿わせながらコアを囲んでいる。その中で各住戸はL字型の平面、あるいはそれがズレて重なるメゾネット型となり、基本的には端部にテラス、もう一方の端部を水廻りとしている。
このような構成は一部を除いた各住戸において全方位に対して窓を穿つことを可能にし、裏をつくらずに住戸を隣接する空所に余すとこなく対峙させようとするものである。また各住戸は幅が狭いので、いわば全てがペリメーターゾーンであり、窓際であるともいえる。どうしたって身体と窓の距離が近くなるので、体感的には建物の外形を超えて空所に晒されている、あるいは空所を住戸内に抱え込んでいるかのようである。
特に賃貸住宅という用途の属性として、投機的なものであることとか、不特定な住人を想定することも含めて「図」は制度の隠喩であり、一方で何ものにも占有されていない「地」は自由を象徴している。この建物では空間構成とサイズ、プロポーションおよび、窓やテラスを手がかりに、「地」である空所との接続関係を検討することで、建築がアプリオリに制度を内包する「図」であることを比喩的に解放することを意図している。

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