北方町庁舎

岐阜県北方町, 日本
写真 © Hiroshi Ueda
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建築家
シーラカンスアンドアソシエイツ
場所
岐阜県北方町, 日本
2016

北方町は岐阜県の南西部に位置し、県内で最も小さな町でありながら人口密度が最も高い町である(人口約18300人)。
敷地の周りには県営北方住宅や生涯学習センター、北方町立図書館、円鏡寺があり、公共インフラとしては北方バスターミナルと防災公園がある。これらの周辺施設との連携に配慮して、設計プロポーザルのスケッチでは、木々が離散的に植えられた敷地の中心に浮かぶ大屋根の下に人々が集う開放的な庁舎を描いている。

建物は明快な3層構成で、1階は窓口業務と「いこい」、「つどい」、「まなび」の広場と名付けた性格が異なる多目的空間、2階は町長室や防災対策室や会議室、3階は議会と議場、職員食堂などで構成した。1階は天井が高く見通しが良い開放的な空間で、2・3階は大屋根に包まれながらも、各室に個別のテラスを設け、明るく快適な室内環境を実現している。

大屋根は、北方祭りの神輿や円鏡寺など、北方町らしさを模索したのが出発点である。そして、その先に見据えていたのは日本の気候風土と自然が導いた素朴で合理的な屋根を発展させた、明るく快適な室内環境を実現する大屋根の可能性である。軒の出が深い大屋根は、夏の日差しを遮り、雨の日にも自然換気ができる反面、1階の室内は暗くなる。そこで、山のような大屋根を谷のように抉り、谷テラスと名付けた奥行きの深いテラスを4か所設けた。このテラスに面した高窓から吹抜けを通して、1階に光と風を導き、明るく快適な室内空間を実現している。

大屋根の仕上げは、あえて遮熱効果が低い板金を選定し、大屋根の中空層を活用した太陽集熱を試みている。冬は暖めた空気を空調のサプライに用いて省エネ化を図り、夏は屋上の鳩小屋から排熱する。軒裏が抉られ、建物を大屋根が覆うようになっている箇所は、環境的なダブルスキンとなり、室内側の斜めの壁は自然光のリフレクターの役割を果たす。また、大屋根で覆われた内部空間は、必然的に外壁側に斜めの壁が生じる。結果として、2、3階の小さな諸室はオフィス空間にありがちな均質空間ではなく、斜めの壁により床面の広がりが強調された空間となった。

21世紀の大屋根をもつ北方町庁舎が、町民にも職員にも快適であり、様々な活動を生み出していくような場となっていくことを願う。

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