松栄山仙行寺

東京都豊島区, 日本, 2018

来迎する「山」 「その石は踏んじゃだめだよ。お墓かもしれないからね。」 小ぶりな西瓜ぐらいの丸石の上を歩こうとしたら、今はもう亡くなった祖母にそう注意された。母方の代々の墓地は山の中にあって、濃く茂った木々の緑の中に、墓石なのか自然石なのか分からないような有様で、それは自然...

半島の家

関東, 日本, 2018

土地を建築する 二つの行為で建築はできている。一つは“フレーム”を土地に立てること。もう一つはその“土地”そのものを操作、もしくは作り出すことだ。 木造や鉄骨造は前者に、RC造や組積造は後者へとそれぞれ属していて、たとえば木で住宅を作ることを考えれば分かり易い。上部構造は言...

Tonarino

愛知県名古屋市, 日本, 2017

「スキ」の配分 名古屋はどこもかしこも緻密な街だという印象がある。 碁盤目状に整然と整備された道路に敷地ブロック、そこに建ついかにも効率の良さそうなオフィスビル群。それらカッチリとしたハードの背後には、それに見合ったキッチリとした封建的な統治機構が透けて見えるようでさえある...

立山の家

富山県, 日本, 2016

立山連峰を稲田越しの正面に見晴らす、北陸富山の敷地。 ここに家族四人が暮らす住宅を、という依頼だった。 その恵まれた周辺環境へと閉かれた伸びやかな空問と家族の親密な繋がりを育むように程よく閉じた空問。その性格の異なる2種類の空問が重なるような平面構成を求めた。 それは豊かな...

知立の寺子屋(teracoya THANK)

愛知県知立市, 日本, 2016

自然科学の寺子屋 愛知県知立市は東海道五十三次の39番目の宿場町である。 敷地は旧東海道沿いの本陣が置かれた場所にあり、地域の歴史的文脈上、町の要と言っていい。その歴史的重要性から、地元に本社を置き世界的に事業を展開するロボット製造会社が、所有者不在となった土地を入手し、ま...

傘の家

静岡県, 日本, 2016

“傘”という、おおらかな形式 東海地方の小さな住宅地、その最奧に敷地はある。背後には樹高20mを優に越える主に落葉広葉樹からなる森林公園が広がり、これに守られるようにして、南には長年丹精されてきた陽だまりの庭が抱かれている。40年来の近所付き合いは、鍵をかける必要もないほ...

道の駅ましこ

栃木県益子町, 日本, 2016

風景の建築 栃木県益子町は陶芸に代表される民藝運動で知られている。その南部地域に道の駅を計画するということで、何度もこの地域を訪れた。敷地周囲には延々と田園や畑が広がり、常にその背後には穏やかな低山が取り巻くように連なっていて世界を他から区画している。そもそも地域振興施設...

新井薬師の家

東京都, 日本, 2015

都市の様相をそのまま引き取る 敷地周辺は戦前からの地割りも残る稠密な住商混合地域。ここに親子三世代が暮らすオフィス兼住宅を、というのが依頼だった。古くからの街らしく、明らかな都市軸もなく、軒を接するように犇めき合う既存建築群もまた、構造形式・規模・用途、それぞれ全て多種多様...

鉄のログハウス

東京都練馬区, 日本, 2014

「大壁」よりも「真壁」に、さらにその先に興味がある。 構造体をその内側に隠したプレーンな面である「大壁」は空間の「ガワ(側)」を示すだけの存在に控える事でその「空間性」を際立たせるが、「真壁」は建築を成り立たせる構造を表面に突出させる事で、「ガワ」として空間を指示するだけで...

加須の美容室

埼玉県, 日本, 2014

2つの構築・2つの構成 人口10万人程の北関東の地方都市に敷地はある。駅から徒歩5分程の立地だけれど、周囲は低層の商店や駐車場がほとんどで、そこに4・5層の商業ビルがまばらに建っている程度だ。いわゆる地方都市の漠然とした風景が、北関東特有の透明な青空の下に低く広がっているよ...

Three Aoyama

東京都, 日本, 2013

東京の中心でニュートラルであること 商業建築というものは、そもそもニュートラルからほど遠い。周囲に抜きん出るために、大きな声で自社の商品を売り込むことが使命なのだから、それらは常にテンションの高いデザインである。その傾向は周囲と競合することで相乗的に高められるので、商業密度...

SHIFT

関東, 日本, 2013

未来に構える 都心から在来線で40分程の距離にあるこの地域は、東京を中心とした郊外開発の最外縁部である。緑地と農地からなる市街化調整区域が市街化区域へと転換されることで宅地化されつつあり、その風景は日々目まぐるしく変化している。都市として落ち着いた恒常状態へと収束するまでに...

Seto

広島県, 日本, 2013

海辺の街のパブリックスペース 瀬戸内海に面するこの地域は、里山がそのまま海面へと落ち込んでいくような地勢で、街は斜面にはりつくように広がっている。当然のように平場は限られていて、街の人々が集い催しを行うようなパブリックスペースが圧倒的に不足していた。求められた用途である造船...

母の家

神奈川県, 日本, 2013

動詞の建築 「建築」は「動詞」だと考えているところがある。 もちろん通常通り、それは「建築」という概念を指す「名詞」でもあるのだけれど、それだけでは「建て」「築く」という動詞性、つまり建築が本来もっている「行為」としての意味合いが抜け落ちてしまうようで、違和感があるのだ。 ...

海辺の家

神奈川県真鶴町, 日本, 2013

開いた秩序がもたらす空間の流動性と滞留性 真鶴半島の付け根近く、南へ向かって下っていく丘陵地が、いったん勾配を緩める肩のような地形上に敷地はある。周囲を取りかこむ広葉樹を中心とした雑木林の向こうには、太平洋がおおきく静かに広がっている。ここに家族とその友人達が週末を過ごす...

VALLEY

静岡県, 日本, 2011

新しい地形 途中二度程クランクした、南北に50m、幅4〜5m程の細長い敷地。県庁所在地でもある地方都市の中心部に位置していて、周囲は高容積な防火地域であることから、中高層の鉄筋コンクリート造の建築物がひしめき合ってい...

YOTSUBAKO

神奈川県横浜市, 日本, 2011

「商業」を「都市空間」へと転舵する 計画地のセンター北駅周辺エリアは、若いファミリー層の人口が増え続ける新興郊外都市の中心地である。その伸びゆく購買力を狙った複数の巨大商業施設が点 在することで、郊外特有の都市景観が...

ジオ メトリア

神奈川, 日本, 2011


土地の構造 箱根の山々と小田原の平野部の交わる辺り、その山側に敷地はある。
以前は果樹が植えられていた明るい里山中腹の緩く傾斜する土地で、南側の遠方には相模湾を望み見晴らしがよいが、北風からは、背後の山が敷地を抱く...

near house

東京, 日本, 2010

“小ささ”を“近さ”と読み替える 都内でも比較的細かな地割りの続く密集度の高い住宅地。それを更にもう一段分割して分譲された敷地は、当然、それなりの“小ささ”である。旗竿型という、 整形ではないこのタイプの地型では、面...

PLUS

静岡, 日本, 2009

白の質量 南方に太平洋を見下ろす伊豆山の中腹に敷地はある。
西側と北側をナラや山桜等の落葉広葉樹からなる天然林に囲まれ、豊かな自然環境に恵れているが、ほとんど地山の地形そのままで、建築に十分な平場は見当たらない。
た...

Tree house

東京, 日本, 2009

都内北部の穏やかな丘陵地上の住宅地内に計画された、夫婦二人の為の住居。
丘の頂部近くの旗竿型の敷地で、地盤は竿から旗へと緩く上っていく。周囲を隣家に囲い込まれ、旗竿地特有の薄暗さや圧迫感もあったが、それよりも少し街か ら奥まった外部に晒されていない深部といった場の性格が意識...

雨晴れの住処

東京, 日本, 2008

「雨・晴れ」 気候の中の建築

敷地は、温暖湿潤気候帯から熱帯雨林気候帯へと、近い将来、移ろうとしている関東平野中央やや西寄り、東京都内の低層高密な住宅地内にある。
求めたのは「住宅」というよりも「居住」を誘発する永...

おおきな家

東京, 日本, 2006

「質」の対話 目黒通りから一本奥に入った、昭和初期頃からの閑静な屋敷街の一角が敷地である。
都心部には珍しく大きな区画に邸宅が建ち並ぶ地域で、この計画もそれなりのスケールを持つことになった。「おおきな家」の設計である...

SAKURA

東京, 日本, 2006

東京の住宅地に計画された夫婦二人のための住居兼オフィス。
都内でも有数の地価の高いエリアに敷地はあるが、他の都心部の住宅地の例に漏れず住宅が雑然と密集した状況から、その価格ほどに住環境として良質であるとは言い切れない。
ここに更にもう一つ住宅を押し込むことより、良好な住環境...

屋上のランドスケープ

東京, 日本, 2004

なんでもない場所
 屋上や河原が好きである。
考え事をしたり、アイディアを錬ったり、特別な誰かとゆっくり話をしたりするのは大抵そんな場所だ。そんな場所には似たような人たちがなんとなく集まる。 空が広いのがいいのだろう...

とりりん

静岡, 日本, 2004

4連HPシェルユニットの薄肉チューブ 「とりりん」は惣菜と精肉を販売する店鋪である。建築は最初の約5年間のみ初期用途のために使用されるが、その後は他の用途に転用されることになっている。より大きな旧店鋪で使用していた厨...